「癒し?そんなもの必要ない」

長年に渡って、男性のための癒しのグループ、
メンズ・リトリートを行っている
マイケル・ミードさんという人がいます。

ミードさんのグループ以外にも、男性のための
癒しのグループワークを行っている所は
たくさんありますが、たいがいの場合、
参加者のほとんどは、年配の白人男性。

そんな中で、ミードさんのメンズグループは、
かなり異色です。

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参加者の半分以上は若い黒人の男の子や
メキシコ人の男の子。

ミードさんは、黒人やラテン系の
低所得層の若者たちに、積極的に
メンズ・リトリートへの参加を呼びかけます。

black kid black boy

白人のカルチャーと有色人種のカルチャーは、
隔たりが深く、特に黒人の男の子たちは、
真面目に学校に通ったり、一生懸命に勉強したりすると、

「お前は白人になろうとしているのか!」と
言われて、いじめにあったりします。

twisted black gyangster

おのずと、学校はドロップアウト、
ろくに仕事にもつけない環境から、
ドラッグの売買を始めたり、
ギャングのメンバーになったり…。

大人になる頃には、何かの事件に巻き込まれて
刑務所に入るか、命を失うか…。

そんなことが日常茶飯事に起こっていて、
癒しどころではありません。

地域によっては、黒人男性の平均寿命は
25歳と言われている場所もあります。

young black safe

セラピーやカウンセリングも、まだまだ白人の文化であり、
癒しというものが、それ以外の文化の中にはなかなか広まって
いきません。経済的にも心理的にも、分厚い壁があります。

もしかしたら、ミードさんのメンズグループは、
アメリカで唯一白人に偏っていない
メンズグループかも知れません。

Men's retreat

ほとんどストリートで育った子供たちは、
キレイな街で普通に教育を受けて、
普通にカウンセラーになった人たちには、

どれだけの学歴や癒しの体験や知識があっても、
最初から会いに行く気も起こらない。
共通点がなさすぎて…。

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ミードさんは、アイリッシュ系の白人ですが、
ニューヨークのスラム街で育ち、
若い頃は、彼自身もギャングのメンバーでした。

だから、「癒し?そんなもの必要ない」と、
ナイフのように尖った子供たちと、
”同じ言語”で話すことができる。

ミードさんは、いつもアフリカのドラムを
叩きながら、リズムと一緒に古くから伝わる
民話を語ります。

民話には、たくさんのシンボル、英知、真実が
隠されています。

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私も、メンズグループには入れてもらえませんが(笑)、
ミードさんの講演会などは、できるだけ足を運びます。

ミードさんは言います。

「子どもたちの心がこわれていくのは、

その子の持っているギフトが、

表現されていないから」 


ミードさんは、ギャングメンバーや
ストリートで暮らす親のいない子どもたちに

癒しを伝え、愛と勇気を与え続けてくれている 、

数少ない大人のひとりです。

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ドラムでストーリーを語りながら、 
怒り、絶望、
悲しみ、暴力の中で生きている
子どもたちの内側に
うずまいている言葉や気持ちを
ひきだし、
癒しへと導いていきます。 


そして、その表現を詩でつづっていくことを、
一緒にします。 
それが深い癒しへと、
つながっていきます。

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最初は、ものすごく抵抗感が出てくるそうです。

「はぁ〜?俺が詩を書く?」
「んな女々しいことできるかぁーっ!!」

みたいな感じだそうです…(泣)。

でも、ポツリ、ポツリと、言葉が、気持ちが、
聞いて欲しかったこと、わかって欲しかったこと、
それは、苦しみや悲しみだけではなく、

誰かを大切に思う気持ち、
誰かに伝えたくて伝えられなかった言葉、
やさしさ、あたたかさが、
出てこれるようになります。

black writing

“常にタフで強くなくちゃいけない”
“そうしなければ、生きていかれない”

うんと小さい頃から、イヤというほど、
それを叩き込まれてきた子供たち…。

強そうな体の奥に隠れていた柔らかい心が、
少しずつ、出てこれるようになります。

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そうして出来上がった詩を、近所の人々を 
集めて聞いてもらいます。
その時は、警察の人とかにも来てもらいます。

ミードさんは言います。 


「子どもたちはすべて、どこから来ても、
どこに行っても、あたたかくコミュニティに
迎え入れられなければならない。

それを用意するのが大人の仕事です。」

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ある時、2年間の刑務所を終えて 
出てきた若者がいました。 

ミードさんは、彼に聞きました。

「君が刑を終えてでてきたとき、
みんなはちゃんと出迎えてくれたかい?」

男の子は言いました。
「誰も口なんか聞いてくれやしないよ」

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その子は、親のいない子どもでした。

そのとき、80人の人々がその場に集まっていました。 


その若者の言葉を聞いて、80人の人々全員が立ち上がり、
その若者の周りに集まってきて、あらためて彼を出迎えました。 


後で、その中から70代の老夫婦が、

「これから、私たちがあなたの親代わりになりたいわ」 
と
名乗り出たそうです。

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ミードさんは子どもたちに、

「How are you?」と挨拶するかわりに、 


「I see you」、「私は君を見ているよ」

と言います。

「私には、君の輝く魂が見える」と、

まっすぐに子どもの目を見つめて言います。

こんな大人がひとりでも周りにいてくれたら、
子供達の世界は大きく変わります。

大人が大嫌いだった、15歳くらいの頃の
自分を思い出しました。

あの頃に、
「本当のキミを見ているよ」と、
まっすぐに目を見ていってくれる大人がいたら、
15歳の私は、どんな風に感じたかな…。

そんなことを思いながら、
今は、自分がそういう大人になれるように…。
そして、癒しをすべての人の日常に…。

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